近所の図書館で書棚を眺めていたら、偶々目に入った『はじめての解析学』(原岡喜重)を借りて読んでみました。ブルーバックスの中の一冊なので、基本的なスタンスとしては(専門家向けではなく)一般向けに書かれていると思います。
「5 実数と関数」の中にε-δ論法で極限を定義する話題が出ていました。しかし専門書ではないので「ε-δ論法」という用語は使っていませんでした。そこで書かれていた事柄が、個人的には役に立ちました。158ページに以下のような記述があったのです。
高校数学のやり方をすると、{an}の極限が2/3となることが発見できます。一方後半のεを使ったやり方では、極限2/3の値があらかじめわかっていることが必要です。つまり収束の定義は、極限がどういう値になるかということを教えてはくれないのです。
では 高校数学のやり方が万能かというと、ニュートン法のところで見たように、数列{an}は何らかの値には収束するのだがその極限の値はわからない、という場合があり、実はそのような場合が圧倒的に多いのです。だからこそ、その極限の近似値として使える数列{an}が役に立つのです。
ε-N論法とかε-δ論法がよくわからない(多くの人が躓くようですが)ので、図書館にある書籍を読んでみたり、Webで情報を得てみたりしましたが、「腑に落ちる」という感覚が得られませんでした。
大学レベルの数学書籍の言い方を借りれば、高校数学のように「感覚的に収束を定義する」のではなく、ε-δ論法を持ち出してきます。しかし例題では収束される値か既知であるかのように記述されていて、ε-δ論法が収束の定義だと言うのに、既知の値が出てきているのは「いったいどういうことなんだろう???」と、モヤモヤとした感覚が拭えませんでした。
結局は、上述した引用のような事情があるのですが、教科書では触れていないということだということでしょう。ようやくスッキリしてきました。