2026-03-28

「Making a Disk From Tape」と「Booting UNIX」の対称性

SETTING UP UNIX - Sixth Edition」の「Making a Disk From Tape」と「Booting UNIX」は、手順が対称的になっていることに気づきました。

 

「Making a Disk From Tape」では、細部を省略すると、次のような手順です。

  1. TU10コードをフロントパネルから入力して実行する。
  2. mbootがロードされるので、実行されると、プロンプト「=」が出力される。
  3. tmrkなどを入力することで、テープからディスクにコピーが行われる。

 

これに対して「Booting UNIX」では、次のような手順です。

  1. RK05コードをフロントパネルから入力して実行する。
  2. rkubootがロードされ、実行されると、プロンプト「@」が出力される。
  3. rkunixなどを入力することで、ディスクからカーネルが起動する。

 

「Making a Disk From Tape」の処理を追いかけてくることで、UNIXv6が動作する以前の世界が理解できました。

RK05は2種類ある

「RK05 disk drive maintenance manual」(DEC-00-HRK05-C-D)に記載されている「Table 1-1 Performance Specifications」には「Sectors(records)」として「4872 (12 per revolution)/6496 (16 per revolution)」とあります。これは何でしょうか。

 

RK05は、片面203シリンダ(含予備)なので、両面ならば406トラックあります。406×12=4872ですし、406×16=6496です。計算は合っていますが、どういう意味でしょうか。Geminiに相談したら、RK05は、1シリンダが12セクタの製品と16セクタの製品が存在したのだと回答しました。そうなのかもしれません。しかし裏付け資料が見つからないので、真偽が定かではありません。

 

UNIXv6の「rk.s」には、「div $12.,r0」という処理があります。この結果がRKDAレジスタ(777412番地)に入ることになるので、12セクタのための処理なのでしょう。しかし、もし16セクタのRK05があるとするならば、その容量を活かせていないことになります。

 

RK05に12セクタ版と16セクタ版が存在すると仮定して、UNIXv6が自動判別する処理を組み込むのは、当時の歴史的事情としては許されなかったのではないかと推測します。どちらかい決め打ちするのであれば、12セクタ版にしておいた方が無難と判断したのかもしれません。 

 

 

tm.sのtreadとrk.sのwblk

スクリプト「run」で作られる「tmrk」の処理の中心は「mcopy.s」にあります。最も重要なのは、「tread」と「wblk」を呼び出して、512バイト(256ワード)のコピーを指定回数分だけ繰り返しているところです。

 

「tread」は「tm.s」にあります。「wblk」は「rk.s」にあります。両者を見比べると、テープを操作するかディスクを操作するかという事だけではなく、大きく違うのですが、論理的には対称になっているはずです。「wblk」の方がシンプルで、「tread」は複雑です。その複雑さに目を奪われてしまうことなく、対称性に注意すれば、「tread」が何をしようとしているのか見えてくると思います。 

mcopy.sにおいて「illegal digit」が出力された場合の挙動

SETTING UP UNIX - Sixth Edition」の「Making a Disk From Tape」の手順に従って「tmrk」を呼び出すと、「disk offset」、「tape offset」、「count」の入力が求められます。これは「mcopy.s」のルーチン「numb」が呼ばれることで、キーボードから入力された数値がR0に入ります。ここで数字以外を入力すると「illegal digit」というエラーメッセージを出力して、「rts pc」が実行されます。ここで気になるのは、一体何処にもどるのでしょうか。

 

「tmrk」の中で「jsr pc,numb」として呼び出されている訳ですが、「tmrk」の中に戻るわけではないようです。エラー発生時に処理を追いかけていくと「tst (sp)+」をした後で「rts pc」となっています。この「tst (sp)+」が重要です。オペコード「TST」というのは、オペランドを評価してフラグをセットする命令です。普通は直後に条件分岐命令が続きます。しかしここでは「rts pc」が続いていて、フラグの状態には影響されません。

 

要するにここでは、TST命令である必要はなく、「(sp)+」として、SPが変化する事が重要なのです。SPを変化させることで、「tmrk」から呼び出された際の戻り番地を捨て、その上位にある「mboot」に戻るためのテクニックだと思います。そうなら、それが分かりやすいプログラムを書けば良いではないかと思うところですが、こういう職人芸的なプログラムを書くところが当時の時代背景としてあったのでしょう。 

「SETTING UP UNIX - Sixth Edition」の「Making a Disk From Tape」におけるmbootとtmrkの関係

SIMHのPDP11エミュレータを利用し、UNIXv6について学ぼうと考えています。同様の志を持つ方は少なくなく、オンラインでも書籍でも数多くの情報があります。しかしながら、それらはUNIXv6がディスクにインストールされていることを前提としており、「SETTING UP UNIX - Sixth Edition」の「Making a Disk From Tape」について言及されていないように思います。それでも別に構わないのですが、いきなりカーネル本体に取り組むより、例え多くの情報が蓄積されているとしても、まずはPDP-11のCPU本体や周辺機器の扱いに慣れる意味で、「Making a Disk From Tape」の手順や、その処理に精通しておくことにしました。

 

「Making a Disk From Tape」では、TU10の先頭ブロックをロードするコードが提示されています。PDP-11実機であれば、これをフロントパネルから入力し実行することで、配布テープの先頭ブロックがメモリにロードされます。これは、スクリプト「run」で作成される「mboot」であることを突き止めました。これが実行されると、プロンプト「=」が出力され、入力待ちになります。導入手順では「tmrk」と入力することになっていて、これをおこなうことで、配布テープからディスクにUNIXv6がコピーされます。

 

「mboot」も「tmrk」もスクリプト「run」によって作成されるa.out形式ファイルです。しかし両者は独立している訳ではないようで、「mboot」が主、「tmrk」が従の立場で動いているようです。このような主従関係と考えるのは、以下のような挙動だからです。

 

まず「mboot」が0番地からロードされ、実行されると、まず最初に自分自身を137000番地に移して、以降はそちらで実行を続けます。これは、「tmrk」などが0番地からロードされた際に、「mboot」が壊されないためと思われます。この挙動から、「mboot」が主で、「tmrk」が従と見做せます。 

 

さらに「mcopy.s」のでは、文字列を出力するため「jsr pc,4(r5)」のようなサブルーチン呼び出しが存在します。ここでR5は、「tmrk」では設定されていません。「mboot」の方で設定されていることが前提となっています。このような前提で「tmrk」が動作している事実が、主従関係があると判断する理由です。

 

また「tmrk」が実行されると、「disk offset」、「tape offset」、「count」の入力を求め、その入力に応じてテープからディスクにコピーすると、実行を終了してしまいます。実行終了後にどうなるかと言うと、「mboot」に戻るのです。この挙動を見ても、「mboot」が主で、「tmrk」が従だとわかります。

 

「Making a Disk From Tape」の手順6では、「tmrk」の代わりに「htrk」、「tmrp」、「htrp」などを使う場合の記述があります。これらのプログラムは調査していませんが、おそらく「tmrk」と同様だろうと思います。 

2026-03-22

mbootとUnix-v6-Ken-Wellsch.tap

SETTING UP UNIX - Sixth Edition」の「Making a Disk From Tape」で行われた処理について調べています。ここで書かれている手順の概略は次の通りです。

  1. PDP-11のフロントパネルを操作し、100000番地からTU10コードを入力し、実行する。
  2. テープから先頭ブロックが0番地に読み込まれるので、実行する。これは「mboot」です。
  3. 「mboot」の中でプロンプト「=」が出力されるので、テープの内容をディスクに書き込むプログラム名を指定する。ドキュメントでは「tmrk」が指定されています。「mboot」は、指定されたプログラム「tmrk」をテープから探し、メモリにロードし、制御を移します。
  4. 「tmrk」が実行されると、指定位置から指定長をテープから読み込み、ディスクに書き出します。

 

UNIXv6が出た当時は、これらの手順を実機PDP-11/40などでおこなったのでしょうけれども、21世紀に生きる我々はSIMHのPDP11エミュレータを使います。そしてテープイメージには、ファイル「Unix-v6-Ken-Wellsch.tap」を使います。

 

「mboot」は、スクリプト「run」によると、「tpboot.s」、「tty.s」、「tm.s」からできています。これらのソースを参照し、SIMHのPDP11エミュレータのデバッグ機能を駆使し、時々Geminiとの対話を繰り返しながら、解析しました。なんとか「mboot」の動作は理解できた気がします。動作の概略は、以下のようになっています。

  1. TU10コードにより、「mboot」はメモリ番地0からロードされます。「mboot」の目的は、ユーザが指定した「tmrk」などのプログラムをメモリ番地0からロードして制御を渡すことなので、このままではよくありません。そこで自分自身を上位に移し、プログラムがロードされる場所を空けておきます。上位のメモリ番地は137000のようです。
  2. プロンプト「=」を出力し、ユーザからプログラム名を入力してもらい、それをテープから検索します。
    1. プログラムを入力する際、「@」が入力されると、それまでの入力が全て取り消されます。また「#」が入力されると、その直前の入力が取り消されます。
    2. 入力された文字列(「tmrk」など)がテープに存在するか検索します。テープファイル「Unix-v6-Ken-Wellsch.tap」を調べたところ、先頭ブロックには「mboot」が格納されていますが、その次には「hboot」が入っていることがわかりました。その次からTP(V)形式のディレクトリが続きます。PDP11のデバッグ機能を使って動作を確認すると、「hboot」が格納されているブロックから検索を始めていることが分かりました。TP(V)形式のディレクトリではないし、そもそも何故「hboot」がテープに置かれているのか分かりません。 
  3. テープ上の場所が分かったら、それをメモリ番地0からロードして、制御を渡します。ただしロードする前に、メモリを全て0クリアしています。未初期化の変数を参照してしまった場合、再現不能なバグが出ないための事前準備でしょうか。

 

テープファイル「Unix-v6-Ken-Wellsch.tap」を解析すると、次のようになっていました。

  1. Block#0は、a.out形式の「mboot」が格納されている。
  2. Block#1は、a.out形式の「hboot」が格納されている。
  3. Block#2からは、TP(V)形式のディレクトリ情報が格納されている。格納されているプログラムは、次の通りです。
    1. 「dldr」(size:000000344,tape:000031)
    2. 「dtf」(size:000004546,tape:000032)
    3. 「hboot」(size:000000724,tape:000037)
    4. 「hpuboot」(size:000000766,tape:000040)
    5. 「hthp」(size:000000624,tape:000041)
    6. 「htrk」(size:000000554,tape:000042)
    7. 「htrp」(size:000000566,tape:000043)
    8. 「mboot」(size:000000674,tape:000044)
    9. 「mcopy」(size:000000660,tape:000045)
    10. 「mem」(size:000012756,tape:000046)
    11. 「reset」(size:000000024,tape:000061)
    12. 「rkf」(size:000000200,tape:000062)
    13. 「rkuboot」(size:000000716,tape:000063)
    14. 「rpuboot」(size:000000730,tape:000064)
    15. 「tboot」(size:000000626,tape:000065)
    16. 「tcf」(size:000004516,tape:000066)
    17. 「tmhp」(size:000000574,tape:000073)
    18. 「tmrk」(size:000000524,tape:000074)
    19. 「tmrp」(size:000000536,tape:000075)
    20. 「uboot」(size:000001000,tape:000076)

2026-03-19

Unix-v6-Ken-Wellsch.tapの構造

SIMHのPDP11エミュレータを使ってUNIXv6を学ぼうと考えています。同様の志を持つ人たちが、ネットでも書籍でも多くの情報を提供しています。ただしUNIXがインストールされた環境を前提にしていることが多いように見受けられます。カーネルを学ぶには、インストールが済んだことを前提にする方が良いのだと思いますが、PDP-11について学ぶ練習のため、「SETTING UP UNIX - Sixth Edition」の手順でインストールするところから調べてみようと思います。

 

 SIMHで利用できるテープイメージのファイルが「Unix-v6-Ken-Wellsch.tap」として入手できます。これはSIMHで扱える形式になっているようです。その構造は「SIMH Magtape Representation and Handling」という資料があります。この構造を確認するため、Pythonでスクリプトを組んでみました。

#!/usr/bin/python3

def readblock(f):
    global TapeMark
    global Block
    Block += 1
    len0 = int.from_bytes(f.read(4),'little')
    if len0 == 0:
        TapeMark += 1
        if TapeMark >= 2: raise EOFError
        return 0
    TapeMark = 0
    data = f.read(len0)
    len1 = int.from_bytes(f.read(4),'little')
    print("[%6d]:" % Block, TapeMark, len0, data[:4])
    return 0 if len0 != len1 else len0

TapeMark = 0
Block = 0

with open("Unix-v6-Ken-Wellsch.tap","rb") as f:
    while True:
        try:
            readblock(f)
        except EOFError:
            break
#[EOF]

 これで確認すると、512バイトのブロックが12,100あります。ドキュメントに書かれているとおりです。

 

また先頭ブロックには「mboot」があります。次のブロックには「hboot」が置かれています。その後には「TP(V)」形式のディレクトリが続きます。ブートプログラムとして「mboot」と「hboot」の二つが用意されている理由はなんでしょうか。ドキュメントでは、フロントパネルから入力する「TU16」のプログラムが「(To be added)」となっています。このテープの配布を受けた側がTU10でもTU16でも対応できるようにしておいたのかもしれません。