2021-06-03

レイ・ブラッドベリ『華氏451度』

2021年6月に放送される100分 de 名著はレイ・ブラッドベリ『華氏451度』です。タイトルや著者の名前は耳にしたことがあるような気がしますが、何も知らない状態です。解説は戸田山和久さんで、NHK出版から出た『論文の教室』を読んだことがあり、お名前は存じていました。


『華氏451度』は1953年に出版されましたが、小説の舞台となるのは約100年後です。未来を扱うと何でもサイエンス・フィクションになるわけではないと思いますが、ある種のSF小説です。作品の描く世界は「明るい未来」というようなものではないようです。1949年に出版されたジョージ・オーウェル『1984年』のような印象です。これらの作品はWWIIが終わり米ソ冷戦時代が始まったという時代背景を踏まえているのでしょう。


『華氏451度』にしろ『1984年』にしろ、コントロールされた社会を描きますが、今日の社会情勢を窺わせるようでもあり不気味です。娯楽小説ではないのでハッピーエンドにはならないのですが、小説の中の世界ならばハッピーエンドでも悲劇的な結末でも構わないとしても、現実が悲惨な結末を迎えるのは耐えられません。


100分 de 名著では放送に併せてテキストが出版されています。その最後は「引き継ぎなさい。」で締めくくられています。この小説の特徴のひとつが「すぐに答えを迫る社会」として描かれており、反射的な反応が求められる傾向は現実社会でも強まっています。しかしゆっくり考える反省的思考が必要でしょう。


『華氏451度』そのものは読んだことがないので、早々に読んでみようと思っています。

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