最近(と言っても、ここ数年ということではなく、もっと前からですが)の傾向として、やたらと「様」を付ける事が多くなったと感じています。例えば病院で、以前なら「患者さん」と呼んでも別に失礼ではなかったはずですが、近年は「患者様」と呼ぶのが当たり前のようになっています。昔でも「お客さん」と「お客様」とでは、敬意の表し方が違っていたとは思いますが、今のように何でも「様」を付けておくようなことは無かったと思います。
何でも「様」を付ける傾向にありますが、付けておけば無難だろうと思っていたり、付けた方が丁寧に聞こえる(のではないか)と思っていたりするのかもしれません。
「様」を付ける事例を見かけるけど、それで良いのだろうかと考えてしまう例のひとつが、役職などに「様」を付ける場合です。ある人が、例えば大臣・知事・市長などであったり、または社長・部長・局長などであったりするときに、「誰々社長様」と呼びかける場面に遭遇することがあります。「誰々」と呼び捨てにするのは失礼だと思いますが、社長のような役職がついていれば十分ではないかという気がします。それに「様」をつけたら、やり過ぎという気がするのですが、相手から失礼だと思われる(相手が本当に思うかは、だぶん関係ないでしょう)のが怖くて、とりあえず付けておくという事ではないかと思います。
一方で「のらくろ」などを見ていると、「何々大尉殿」とか「何々中隊長殿」のように、階級名や職域名に「殿」が付いています。「様」ではなく「殿」なのは、時代を反映しているだけかと思いますが、下位の階級の兵卒などが上位の将校を呼ぶ際に「殿」を付けなかったら、只では済まなかったのではないでしょうか。
さらに時代を遡って旧幕時代になると、「松平備後守」のような名前があります。正式には諱があって「松平備後守家胤」のようになるのでしょう。しかし諱は普段使うものではなく、通常は「松平備後守」で名前そのものという感覚だったようです。「備後守」のような役職名はもはや国司でもなんでもなく実態を伴っていないので、(今日の「太郎」や「花子」のような)名前の一部なのでしょう。そうなれば、「松平備後守様」とか呼ばないと敬意を表せませんし、「松平備後守」では呼び捨てに聞こえてしまうでしょう。
このような感覚を日本人が持っていたなら、旧軍で「殿」を付ける感覚も分からないではありませんし、現在でも「誰々部長様」などと言ってしまう感覚も理解できます。
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