ウィキペディア「日明貿易」では次のように説明しています。
勘合符とは木の札に字を書いてから、中央で二つ割りにしたものである。両者が片方ずつ所持し、照合のさいに合わせてみて、ぴたりと合えば本物ということになる。勘合には「日字勘合」と「本字勘合」の2種類が存在した。制限貿易で、日本→明は「本字勘合」、明→日本は「日字勘合」が使用された。
つまり、文字を書いた木札を分割し、(例えば)一方を日本側が、他方を明側が所持しているわけです。それらを突合させることで、今日でいうところの「本人確認」をするわけです。これ自体は別に不思議でも何でもないですが、最初の「勘合符」を日本と明で個々に所持するのは、どのようにして行ったのでしょう。
厳密(疑い深くとも)に考えれば、木札を割って勘合符とする実作業がおこなわれた時の各々の代表団が、本物なのか証明しなければなりません。正式な代表団であることを証明する文書を所持していたとしても、それは偽文書かもしれません。より厳格に対応するには、その時点で既に「勘合符」を保持していなければならないでしょう。しかし、その勘合符を所持しているためには、事前に勘合符を交換していなければなりませんが、その方法はというと・・・、という具合に、無限ループに陥ってしまうはずです。
もしかすると「そんな面倒なことを言い出さなくても、最初は国家が発行する文書をもって正式な代表団であることを証明すればいいんだよ」と思うかもしれません。しかし、それで「正式」であることが証明できるのであれば、「勘合符」なんて面倒なシステムを持ち出さず、いつも必ず「文書」を持って正式な代表団であることを証明して貿易すればよかったのではないでしょうか。
今日のコンピュータ・ネットワークにおいて、暗号鍵交換を如何にセキュアにおこなうかという問題に似ているのではないかと思います。
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