『新日本古典文学大系』にある『平家物語』を読んでいると、様々な疑問がでてきます。古文ですから、もちろん現代文の感覚とは異なるところが多く、その疑問は古文に不慣れであるという事で納得できるところもあります。しかしそれだけでは済まないところもあるように思うのです。
「殿上闇討」には次のようなくだりがあります。
五節には、「白薄様・こぜむじの紙・巻上の筆、鞆絵かいたる筆の軸」なんど、さまざま面白事をのみこそうたひ舞はるゝに、
ここで「面白事をのみこそうたひ舞はるゝに」って何なのでしょう?河出文庫の古川日出男訳『平家物語1』では、このあたりは次のように訳されています。
さまざまに面白いことを詠みこんだ歌をうたい、舞っております。
これらを対比させると、「詠みこんだ歌をうたい」が「のみこそうたひ」に対応するのかと思われ、あまり納得もできませんが、そういうものかと考えていました。
『新日本古典文学大系』 の『平家物語』で該当箇所を確認すると、次のようになっていましあ。
さまざま面白き事をのみこそ歌ひ舞はるるに、
なるほど!「のみこそうたひ」とは「のみこそ/うたひ」であり、「のみこそ歌ひ」だったのかと思い知りました。古典文学の専門家からすれば、当たり前の解釈なのかもしれませんが、仮名と漢字が適度に混じっていないと、素人には意味がとれない事を実感しました。
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