2022-05-04

『「知」のソフトウェア』(立花隆)

 東京大学出版会の広報誌「UP」の2022年4月号は「東大教師が新入生にすすめる本」のアンケート結果が掲載されていました。毎年4月号には同様のアンケートが掲載されています。その中で「これだけは読んでおこう――研究者の立場から」として薦められていた『「知」のソフトウェア』(立花隆)を読んでみました。

 

これが出版されたのは1984年です。NECからPC-9801が登場していたとは言えパソコンが普及していたとは言えません。またインターネットも存在していたものの、研究目的なので一般には縁がない存在でした。類書としては「知的生産の技術」(梅棹忠夫)が1969年に出版されており、本書の中でも言及されています。これ以外にもノウハウ本は少なくありませんが、本書は類書と違い、そのテクニックを伝授しようとはしていません。本書に書かれている「ある“整理マニア”の悲喜劇」にあるように、目的を見失った技術信仰を戒めています。

 

本書が執筆された当時でも膨大な情報を如何に整理するかという事に頭を悩ませていたようですが、今日では更に輪をかけて多い情報の洪水の中を如何に流されずに泳ぐかという「テクニック」を語る本が数多く出ています。何のために情報を整理するのかという目的を見失うと、アウトプットが無いままに情報を整理するだけで一生を終えるという「喜劇」が生じます。

 

本書に書かれた事柄が今日でも適用できるわけではないとしても、その背後に考えておくべきことは、今日でも十分に適用できると思います。

 

 

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