2024-09-19

PDP-11の777572番地はMMRなのかSRなのか、それともSSRなのか

PDP-11/40で動作するUNIX V6のカーネルを勉強するため、まず最初にブートストラップ処理を追いかけていこうと思っています。その処理はm40.sのstartラベルから始まります。まず最初に「bit $1,SSR0」という処理が現れますが、SSR0とは何でしょうか。カーネルを読み進めていくには、PDP-11について幅広く理解していることが求められます。カーネルを学んでいる最中には、それほど知識を有しているわけではありませんから、DECが発行していた資料を調べてみたりする必要があります。その最初の課題が「SSR0」を理解することです。

 

1972年に発行された『pdp-11/40 processor handbook』を参照すると、「CHAPTER 6 MEMORY MANAGEMENT」の中に「6.6.1 Status Register #0 (SR0) (status and error indicators)」という項目があります。ここでは「SR0」とあり、「SSR0」ではないのですが、おそらく同じものです。同書の巻末にある「APPENDIX B MEMORY MAP」では、777572番地が「11/45 SSR0」と説明されています。なぜか「11/45」と断っているし、「SSR0」となっているのも気になります。Lions本では、m40.sの1445行で「SSR0 = 177572」とあるので、SR0が正しいのかSSR0が正しいのか不明ですが、UNIX V6ではSSR0としているようなので、あえて意義を唱えることもありません。


これで一件落着かと思うところですが、さらに調べてみると、疑問が拡がりました。1973年に発行された『pdp-11/45 processor handbook』を参照してみると、「CHAPTER 6 MEMORY MANAGEMENT」の中に「6.6.1 Status Register #0 (SR0) (status and error indicator)」という項目があります。これはpdp-11/40と同じなのですが、巻末の「APPENDIX C MEMORY MAP AND RESERVED LOCATIONS」では「777572 through 777577 Memory Management Status Register 0-2」とあり、pdp-11/40とは表現が異なります。

 

さらに1975年に発行された『pdp-11/70 processor handbook』を参照すると、「CHAPTER 6 ADDRESSING」の中に「6.5.6 Fault Recovery Registers」とあり、そこでは「Memory Management Register #0 (MMR0) (status and error indicators)」と名称が変わっており、巻末の「APPENDIX A UNIBUS ADDRESSES」では「777 572 Memory Mgt regs. (MMR0)」となっていて、もはやSSR0とは名乗らず、MMR0で統一されています。

 

777572番地のレジスタの名称が「SSR0」だろうと「MMR0」だろうと、DECが決めた名称なので、どちらでも構わないのですが、PDP11のモデルによって名前が変わるのは、今後資料を参照する際に混乱しそうで、ちょっと心配です。PDP11の後継機種の資料を参照すると、もはや「SSR0」とは呼ばず、「MMR0」となっているので、DECで方針が変わったのではないかと推測します。当初の「Status Register (SR)」というのは、機能として実体に即しているとは思いますが、意味が一般的すぎることを懸念したのかもしれません。最終的に「Memory Management Register (MMR)」とすることで、より限定された意味を持たせることにしたのでしょう。

 

この調査をしていて、いろいろな資料を見つけました。1976年に発行された『KT11-D memory management option user's manual』では「CHAPTER 3 OPERATION AND PROGRAMMING」の中に「3.6.1 Status Register 0 (SR0)」とあるのは、上述した『pdp-11/40 processor handbook』で書かれていたのと、ほぼ同じ内容です。この資料の「CHAPTER 2 INSTALLATION INFORMATION」には以下の記述があり、pdp-11/40と11/35で使われたモジュールであることがわかります。

The installaion procedure for the KT11-D Memory Management Unit option is included as part of the complete PDP-11 system installation procedure described in Chapter 2 of the PDP-11/40, PDP-11/35 System Mnual (21 Inch Chassis).

 

 また1972年に発行された『PDP-11/45 memory management reference manual』では「INTRODUCTION」において以下の記述があります。PDP-11/70もメモリ管理としてはPDP-11/45と同等のようなのですが、PDP-11/70でKT11-Cを使用しているという情報は得られませんでした。

The KT11-C Memory Management Unit is a hardware option designed for use with the PDP-11/45 Programmed Data Processor.

 

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