日本を含めた世界中で「バイキング」と言ったら8世紀前後に大暴れした集団を意味していますが、日本では食べ放題形式の食堂を「バイキング」と呼んでおり、武装集団としての「バイキング」より食べ放題としての「バイキング」の方が認知度が高いのではないかと思います。
そもそも日本で「バイキング」が食べ放題形式の食堂という意味になっているのかという理由について、ウィキペディアでは次のように説明しています。
日本語では「バイキング」と称されることがある。日本初の食べ放題レストランの店名が「バイキング」であったことに由来する。
ウィキペディアによると、食べ放題形式のことを英語ではフランス語風の「buffet」とか北欧風の「smorgasbord」と呼ぶようです。
日本語では外国由来の単語をカタカナ表記にすることが多くあります。その方式で行くと、食べ放題形式は「ビュッフェ」もしくは「スモーガスボード」となるところです。しかし「ビュッフェ」と言えば「立食形式」を日本ではイメージするでしょうし、「スモーガスボード」にいたっては一般的な認知度は低いのではないかと思います。
日本語独自の「バイキング」というのは英単語の「viking」の訳語ということではなく、見た目は外来語に似ていますが、外国由来の訳語でも何でもなく純粋な日本語だと思います。だから英会話で食べ放題に関する話題をしようと考えた時に「viking」という語を使うのであれば、その英文が表面的な形式として完璧だとしても、意味的には非英語的表現でしかないでしょう。
要するに「食べ放題」を意味する「バイキング」は日本語でしょう。大和言葉とか和語とか言うと、長い歴史を踏まえている訳ではないでしょうから、言い過ぎかもしれませんが少なくとも外来語ではありません。
現在の日本語を構成する単語は、古くからの大和言葉に由来する語、中国から伝来した漢語に由来する語、古くはポルトガル等であったり幕末以降は欧米であったりする国々に由来する外来語などから構成されています。ここで「バイキング」という単語は、大和言葉とは言えないし、中国伝来でもないし、もちろん欧米由来でもありません。あえて言えば多分に勘違いに由来する現代日本語です。
一見すると外来語のようであって、実は日本独自の単語というのは、他にも事例があります。英語の「stapler」を日本語では「ホチキス」と呼ぶ事例であるとか、紙を複写する意味の「copy」を「ゼロックス」と呼ぶ事例などが思いつきます。
おそらく世界中のどの言語にも同様の現象が存在しているだろうと思います。自国以外から取り入れた単語が本来の意味と全く関係のない意味に使われる事例は日本に限ることではないと思います。
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