2016-09-05

英単語rememberの使い方

大修館書店の『アクティブ ジーニアス 英和辞典』では他動詞rememberについて次のように説明しています。
  1. [SVO]<人が>O<人・物・事> を(自然に)思い出す;(意識的に)思い起こす(↔forget)
  2. [SV to do]忘れないで・・・する
  3. [SV doing]・・・したことを覚えている
[SV to do]の訳語が「忘れないで・・・する」となっています。ここで訳語を「・・・することを覚えておく」と考えるのは良くないのでしょうか。外国語と自国語の語義が(言外の意味も含めて)全く同じというわけにはいかないのを承知した上で、rememberの訳語に「忘れない」という語が現れることには違和感があります。

同じ辞書で 他動詞forgetの用法をみると、次のようになっています。
  1. [SVO]<人が>O<名詞など> を忘れ(てい)る
  2. [SV doing]・・・したことを忘れる
  3. [SV to do]・・・するのを忘れる
このように全て「忘れる」という意味の派生になっています。そうであればrememberの場合は「覚えている」という意味の派生にしておけば良くて、「忘れないで」という訳語を使わない方が混乱がないのではないかと思います。

「覚える」と「忘れる」は対義語です。大修館書店の『明鏡国語辞典 携帯版』では次のように説明しています。
  • 【覚える】記憶にとどめる。記憶する。
  • 【忘れる】前に覚えていたことが思い出せなくなる。記憶が無くなる。
このように反対の意味を持つ語です。「覚える」とは「忘れていない」だし、「覚えていない」は「忘れる」ということですが、こういう知識を援用して英語の意味を日本語で説明するのは不必要に混乱を招くことになると思います。例えばforgetの場合[SV to do]の意味を「・・・するのを覚えていない」としても、forgetのニュアンスは伝わりますが、forgetが本来持つ根源的な語義とは違うと思います。

Collinsの『New Student's Dictionary』では「If you remember people or events from the past, you still have an idea of them in your mind and you are able to think about them.」と説明しています。これは「記憶に残っている」ということで、すなわち「覚えている」ということです。それは「忘れていない」というニュアンスがあるかもしれませんが、「忘れない」という意味を前面に出してきてはいけないと思います。

このようなことを考えてみたのは「Remember Pearl Harbor」という表現を日本語ではどう訳すのか迷ったからです。
  1. パールハーバーを覚えている。
  2. パールハーバーを忘れるな。 
  3. パールハーバーを思い出せ。
この中では1番目の表現が中心となる意味であって、気持ちの上では派生的に2番目や3番目も出てくるとは思いますが、少なくとも直接的な日本語訳ではないと考えます。

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