今年春にNHK出版から「世界史のリテラシー」というシリーズが登場し、2023年8月には『ローマ教皇は、なぜ特別な存在なのか』が出たので読んでみました。中世ヨーロッパの歴史ではローマ教皇が大きな役割を果たしていますが、世界史を学んでも、ローマ教皇が特別な存在であることが前提として歴史を説明しているので、何故そのような存在となっているのかは今まで分かりませんでした。
本書のタイトルのような問い「ローマ教皇は、なぜ特別な存在なのか」の答えが、「それは○○だからです」というような一言で答えられる訳ではないでしょう。本書全体を通して、ローマ教皇にかかわる歴史的な経緯を詳述していくことで、ローマ教皇が「特別な存在」になっていく経緯を説明して本書タイトルの答えとしたのだと思います。
21世紀の今日にも続いているローマ教皇は、もちろんのことながら初期キリスト教の頃からそうだったわけではなく、歴史的に成立した存在だと思います。ローマ教皇が特別なのは、カトリックが世の中に大きな位置を占めていた中世では自明だったのかもしれせんが、ローマ教皇の側があえて特別な存在になろうと動いてきた結果なのでしょう。ふと思うに、日本において尾張・紀伊・水戸の徳川家が「御三家」と呼ばれますが、江戸時代初期には、駿河、甲府、舘林の徳川家も存在してので、徳川分家が三家しか存在しなかった訳ではありません。それが御三家として常識となっていくのは、自然にそうなったわけではなく、あえてそうなるような活動の結果であったようです。そこにローマ教皇が特別な存在となったこととの類似性を感じます。
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