2020-12-24

「御名前様」は「御御御付」である

文豪として著名な夏目漱石の作品に『吾輩は猫である』があります。明治時代に書かれたので文体が古風ですが、日本語文法的には「吾輩」=「猫」という関係が成り立っています。そう意味で標題が「御名前様」=「御御御付」という事ではありません。しかし意識上の問題としてはイコール記号で結び付くのではないかと思います。


まず後半の「御御御付」とは「味噌汁」のことです。語源については諸説あるようですが、丁寧さを示す「御」が次第に重複していったようです。


さて前半の「御名前様」ですが、何時頃からか不明ですが、店頭などで名前を尋ねられる時に「御名前様を云々」と言われる経験をするようになりました。「名前」に「御」がついているだけでも十分に丁寧だとおもいます。ところが「御名前」という表現が当たり前になってしまうと、敬意が不足していると感じるようになったのでしょう。そこで何にでも「様」をつけておけば丁寧になるだろうという発想があるのかもしれません。


随分前のことになりますが、大学受験の際に受験会場の構内アナウンスで「受験生様」と呼びかけられた時には吃驚しました。最近では病院によっては「患者様」と呼びかけるところもあるようです。また施設でも「利用者様」のような表現をしているようです。


何にでも「様」をつければ良いというものではないだろうと(個人的には)感じているのですが、このような傾向は今後も続いていくのではないかと思います。将来は「様」だけでも足りなくて、もっと大仰な接辞がつくかもしれません。


現時点では、「御名前様」という表現はされるのですが、さすがに「御電話番号様」とか「御住所様」のような表現は出現していないようです。しかし、これも登場するのは時間の問題かもしれません。

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