幸福は人格である。ひとが外套を脱ぎすてるやうにいつでも氣樂にほかの幸福は脱ぎすてることのできる者が最も幸福な人である。しかし眞の幸福は、彼はこれを捨て去らないし、捨て去ることもできない。アランの『幸福論』の「幸福は美徳」には次のような一節があります。
なぜなら、完全な意味でもっとも幸福な人とは、着物でも投げ捨てるように別な幸福などはもっとも適切に船外に投げ捨てる人であることは、まったく明らかだからだ。だが彼は、自分の真の幸福はけっして投げすてない。そんなことはできはしない。とてもよく似たことを語っています。アランの文章は1922(大正11)年11月5日に書かれたようです。また三木の文章は昭和13(1938)年7月に「文学界」で発表されました。三木はアランの文章を知っていたのかもしれません。しかし三木は哲学者ですから、単なる引用をおこなったと考えるのではなく、三木が思考を深めた結果として自分の身に一体化したものとなっていたのであろうと考えるべきでしょう。
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