ナショナルジオグラフィックチャンネルで2019年2月から「Mars 火星移住計画 2」というドラマが放送されています。2017年2月頃に放送されていた「Mars 火星移住計画」の続編です。近未来のストーリですからSF物ではありますが、只のSF作品であるだけなら、別にナショナルジオグラフィックが制作しなくても良いわけです。「人類が火星に行く」というテーマを扱う作品でありながら、現在の地球環境や資源開発との関わりを投影しているあたりが、ナショナルジオグラフィックでなければ制作できなかった特徴と言えるでしょう。
未来の火星と現在の地球における資源開発や国際情勢、さらには巨大企業との関わりを、行き来しつつストーリーが展開する視点は、とても示唆に富みます。火星で人類が暮らしていくという問題は、(現時点では「行くことが出来るだろう」という段階にすぎないので)技術的な側面に関心が集中しています。しかし「行くことが出来る」のは(今日の自動車や飛行機でも事故が避けられないように、火星に行くことのリスクはあるとしても)当たり前の時代がくれば、人間の集団による社会が成立していく中で、多様な利害が交錯していくのでしょう。それは今日の地球であろうが、未来の火星であろうが、おそらく変わらないと思います。
さらに興味深いのは、火星に移住した近未来のドラマを視ているなかで、今日の社会問題の一端に気付かされることです。本当に人類は火星に移住できるのだろうか、それは数十年後なのか、100年後なのか、それとも数百年後なのか、正確なところは分かりません。しかしそこに出来上がる社会は、今日の社会秩序や国際情勢の延長線上となるでしょう。未来の火星が桃源郷となることを夢見るのは自由ですが、今日の社会とは全く異なる世界が誕生すると考えるのは、夢物語だろうと思います。
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