長期予報では平年値をもとにした確率表現が使われており、普段見慣れている天気予報とは表現方法が違います。 例えば平成28年8月24日に発表された「関東甲信地方 3か月予報」では、向こう3カ月(9月から11月まで)の気温の状況を階級ごとの出現確率として表現しています。例えば9月であれば、平年より低い確率が10%、平年並である確率が30%、平年よりも高い確率が60%です。漠然と残暑が厳しいんだろうなとは思いますが、具体的にどれくらい暑いのだろうか、いつまで残暑は続くのだろうかとか、そういう疑問に答えてくれる情報なのでしょうか。
気象庁のWebには次のような解説が掲載されています。
ここから分かるのは、確率表現では平年値が基準になっていることです。現在使われている平年値は1981年~2010年までの30年間の測定値が使われています。これは10年毎に見直されるので、10年前では1971年~2000年までの測定値から平年値は計算されていました。
気象庁のWebでは過去の測定値を知ることができるので、具体的に東京を例として考えてみたいと思います。1981年から2010年までにおける7月・8月・9月の東京の平均気温は次のとおりでした。
- 【7月】25.8℃
- 【8月】27.4℃
- 【9月】23.8℃
- 【7月】25.6~26.4℃
- 【8月】27.0~27.9℃
- 【9月】23.2~24.4℃
「平年並」とされる気温の幅は月毎に異なりますから、もしある月の平均気温が25.0℃であったとしても、それが8月のことならば「平年よりも低い」と評価されますし、9月のことならば「平年よりも高い」と評価されるはずです。このように確率表現における「平年並」との比較は相対的なので、絶対的な気温などを想定して考えると発表を読み誤ることになります。
さらに平年値というのは10年毎に見直されますから、10年前の平年値は1971年~2000年までの30年間を対象としていました。ここから計算される平年値は、現在使われている平年値とは違います。例えば東京における7月・8月・9月の10年前の平年値と「平年並とされる温度の幅」は次の通りでした。
- 【7月(10年前の場合)】25.4 ℃(25.2~26.2℃)
- 【8月(10年前の場合)】27.1℃(27.0~27.4℃)
- 【9月(10年前の場合)】23.5 ℃(23.0~23.7℃)
例えば9月の平均気温の予想が24.0℃になると見込まれた場合、現在の平年値(1981年~2010年の平均)で考えれば「平年並」と評価されます。ところが10年前の平年値(1971年~2000年の平均)で考えると「平年よりも高い」と評価されることになります。同じ24.0℃なのに、平年値の取り方によって評価が違ってくることに注意しなければなりません。
東京における9月の気温は「平年よりも高い」確率が60%です。この意味を理解するためには、9月の平年並というのが23.2~24.4℃であることを知る必要があります。この予報が語る情報はこれだけで、実際の気温が何度になるのかということは何も語っていません。そして残暑が何時まで続きそうかということも語っていないのです。そういうことを知りたいのであれば、また別の情報と組み合わせて評価する必要があるでしょう。
9月の平均気温が確定するのは10月です。はたして何度になるでしょうか。平年よりも高い確率が60%ですから「平年並」以上かもしれません。しかしそれは24.5℃かもしれないし、(確率は低いでしょうが)29.9℃かもしれません。
「平年よりも高い」というのが具体的にはどういうことなのかを知るには、発表された長期予報だけでは判断できないという事です。もっと多くの情報(それが何であるのかは不明ですが) を組み合わせて考えることが大切になるだろうと思います。
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