図書館で『東大連続講義 歴史学の思考法』という本を見かけたので、読んでみました。何か特定の歴史的事項について書かれている訳ではなく(例示のために具体例は出てきますが)、 歴史学の「思考方法」を提示するのが目的のようです。本書の「はじめに」で以下のように書かれていますが、その通りだと感じました。
だから本書は、いつ読みはじめても遅いということはないし、一度きりでなく、二度三度とくり返しひもといていただけるだけの不変的価値があると確信している。
第4章の「人びとの「まとまり」をとらえなおす―歴史の中の国家と地域」では、以下のような問いかけが投げかけられています。
人の「まとまり」の最大単位が、世界である。では、その世界の歴史は、どうやってとらえられるだろうか。
日本の学校教育では、日本史と世界史という枠組みになっていますし、その世界史というのが世界各国における自国の歴史を集めたものになっているようです。このような理解を本論では「各国史的理解」と呼んでいます。つまり「一国史」を集めると「地域史」になり、「地域史」を集めると「世界史」になるという理解のことです。しかし本論で「各国史的理解の問題点」で書かれているように、多くの限界や問題が潜んでいます。
考えてみると、これは世界史だけではなく、日本史にも言えることだと思います。専門的と言えるかもしれませんが、行政組織がつくる「自治体史」と呼ばれる書籍があります。都道府県だったり市町村だったりしますが、発行時点における行政区域内の歴史を語るのですが、現在の行政区域に合わせて過去の歴史がすすんでいく訳ではありません。「市町村史」を集めると「都道府県史」になり、「都道府県史」を集めると「日本史」になる訳ではありません。
これを数式で表すと、次のようになるのではないかと思いました。
世界史≠Σ各国史
日本史≠Σ自治体史