鉄道模型にはNゲージ(150分の1)やHOゲージ(80分の1)があります。これよりも小さいZゲージ(220分の1)とかOゲージ(43分の1)などもありますが、一般的ではないでしょう。レイアウト(最近はジオラマと呼ばれたりするようですが違和感があります)を作って運転を楽しむにはNゲージの方が良いだろうし、車両の製作を楽しむならHOゲージの方が作りやすいと思います。縮尺が小さくなれば製作しやすくなりますが、出来上がりが大きくなるので、レイアウトを作って運転を楽しむのが極めて難しくなります。
以前から思っていたのですが、鉄道模型を運転しているところを見ていると、スケール感がないような気がします。要するに異常に速度が速いのです。「独楽鼠が走り回っているようだ」と評されることもあるようです。
現実の鉄道車両の平均速度を考えてみます。最高速度はそれなりに出ると思いますが、実際の運用では最高速度で走っているわけではありません。ローカル線の気動車だったりすれば時速50キロメートルくらいでしょう。例示した時速50キロメートルというのは現実世界の速さですが、Nゲージであれば150分の1でなければならないのです。具体的に計算してみましょう。
1時間は60分×60秒より3,600秒です。したがって時速50キロメートルというのは秒速で約0.0139キロメートルになります。鉄道模型の世界ではキロメートルという単位は大きすぎるので、ミリメートルに変換します。1キロメートルは1,000×1,000ミリメートルですから、秒速0.0139キロメートルというのは秒速13,900ミリメートルということです。
ここまでは現実世界の数値(例示した時速50キロメートル)の単位を変えただけですから、ここでNゲージ(150分の1)の世界の値に変更します。秒速13,900ミリメートルを150分の1にすると、秒速92.67ミリメートルという値が出てきます。これが現実世界における時速50キロメートルを、Nゲージの世界で実現すべき速度(秒速92.67ミリメートル)です。
数字だけでは実感がわかないと思います。Yahoo!JAPAN知恵袋で「距離約2300ミリを3.9秒で走行したので、秒速約590ミリ」 という事例を見つけました。これは全速力で動かしているときですが、それでも相当速いです。現実世界なら時速300キロメートルを越えているので、新幹線並みです。鉄道模型では電車だろうが蒸気機関車だろうが、結局は内蔵モータで動いているので、C62型蒸気機関車だって同等速さで走れるでしょう。現実の蒸気機関車ではありえない速さです。銀河鉄道999のC6250なら出せるかもしれません。
鉄道模型の運転速度が速くなりすぎるのは人間の感覚が150分の1になるわけではないからだと思います。仮にスケール感を保って150分の1の速度で運転しようとすると、周囲で見ている人間からは「亀のように遅すぎる」と感じてしまうのでしょう。
また鉄道模型自体の構造的な問題もあるのではないかと思います。鉄道模型の速度制御は車両の内蔵モータにかける電圧を変えることで実現されています。速度をおとすために電圧を下げてしまうと、車輪などの駆動部分の摩擦抵抗に負けてしまって、動けなくなってしまうのです。摩擦抵抗などの物理法則は150分の1にはなってくれないのです。こういう理由で、鉄道模型は現実感を無視した運転にならざるをえないのだと思います。
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