サントリーから「伊右衛門」という商品名でペットボトルのお茶が販売されています。伊右衛門というのは、江戸時代に京都で創業された茶舗の当主の名前に由来するようです。これに限らず、○右衛門とか□左衛門や、△兵衛などは、江戸時代の庶民の名前によく使われていますし、時代劇にもよく出てきます。
でも考えてみると不思議な気がします。それらは律令制における「衛門府」や「兵衛府」に由来しているはずです。もっとも江戸時代には、律令制は廃れていて、元来の官職のことは全く意識していなかったでしょう。しかし何故「衛門」や「兵衛」などを庶民が名乗ったのでしょうか。武家だと「式部」とか「民部」のような名前がありますが、これも律令制での「式部省」や「民部省」に由来すると思います。
どうして律令制の官職を江戸時代頃には名前に使っていたのか不思議です。さらに「左衛門」とか「大蔵」とか、名前にするのはともかく、庶民と武家との間で何か棲み分けのようなものがあったのかも気になります。例えば大名クラスになると「大和守」のような名前がありますが、さすがに農民階級ではそのような名前は名乗らなかったと思います。間違っても名乗らなかったと思いますが、万が一そうしようとしたら「身分を弁えず不届き」とか言われてしまうのではないでしょうか。